安心して使う · 3 MIN READ
契約書をAIに貼る前に。機密情報・根拠・専門家確認を分ける4つの手順
法律向けAIの新発表を、誰でも使える法律相談機能と誤解せず、契約書や相談文を入力する前に確認したい項目を整理します。
新しい法律向けAIは、一般向け法律相談の解禁ではない
OpenAIは2026年9月17日、法律事務所とリーガルテック企業向けのAstra for Lawを発表しました。米国法の検索索引や法律分析・文章作成向けの設定を組み合わせる仕組みで、開始時は選定された法律事務所にTrusted Accessで提供し、APIは今後提供予定とされています。一般のChatGPT利用者へ一律提供される機能、日本法に対応した一般向け法律相談サービスとして発表されたものではありません。
新機能の題名だけを見て、手元の契約書をそのまま貼り付けるのは待ちます。まず『自分が使っている製品とプラン』『組織で許可された使い方』『文書に含まれる第三者の情報』を分けて確認します。勤務先や取引先の規程がある場合は、個人の判断で設定を変えるだけではなく、その規程と担当者の案内を優先します。
入力前に、名前と固有情報を減らす
相談の目的が『解約条項の論点を整理したい』なら、会社名、担当者名、住所、口座、署名、顧客番号を消し、必要な条項だけを抜き出せないか考えます。全文が必要か、架空の例へ置き換えられるか、そもそも入力してよい文書かを順番に確認します。削除した項目は別の安全なメモに残し、AIの回答と原本を混ぜないようにします。
2026年9月24日確認の公式ヘルプは、モデル改善への利用をオフにしても、通常の会話は履歴に残り得ると説明しています。一時チャットも無保存の意味ではなく、一時のままなら訓練に使われませんが、安全目的で最大30日保持され得ます。個人向け設定では既存メモリ等を使う場合があり、保存後は通常チャットの設定に従います。設定の選択と、契約書を入力してよいという許可は別です。
AIの回答は、根拠と適用範囲を別々に見る
OpenAIの発表では、Astra for Lawの構成を非公開検証セットの米国法調査200問で評価し、最も高い推論設定で全体の正確性チェックに合格した割合を54.0%と報告しています。比較対象より改善したという提供者評価ですが、100%ではなく、日本の契約や個別案件の回答が正しいことを示す試験でもありません。数字は対象、法域、評価方法と一緒に読みます。
回答を受け取ったら、『どの国・地域の法律か』『基準日はいつか』『根拠となる条文や判例のどの箇所か』『事実関係を何と仮定したか』を四列で記録します。リンクがあっても、該当箇所が回答を本当に支えるかを原文で確認します。根拠が見つからない部分は、もっともらしくても結論へ使わず、未確認として残します。
最後は、責任を持てる人へ戻す
架空の例です。AIが『この条項ならいつでも解約できる』と答えても、その一文だけで通知を送りません。原本の通知期限、例外、準拠法、相手との合意履歴を確認し、重要な契約なら弁護士や組織の担当者へ相談します。AIには『確認すべき項目を列挙する』『難しい文を平易に言い換える』ところまでを頼み、最終判断と送信を分けます。
今日の一歩は、文書を貼る前に『入力の許可/削除できる固有情報/対象法域と日付/最後に確認する人』の四項目を書くことです。一つでも不明なら、原文を入力せず、一般化した質問に変えるか担当者へ確認します。便利な法律向けAIが登場しても、機密情報の扱いと専門判断を自動で引き受けてくれるわけではありません。